〈法廷の雫〉
傍聴席が20席しかない東京地裁の小さな法廷。9月15日、詐欺と横領罪に問われた被告の男性(41)の論告求刑公判が開かれた。既婚者だった被告は独身パイロットを装って交際女性からお金をだまし取るなどしたという起訴内容を認めていた。
「一瞬だけでも女性に喜んでもらいたいから両親に結婚のあいさつをした。女性の幸せな顔を見ることが自分の満足感につながっていた」とする被告の主張を読み上げた検察官。そして糾弾の言葉を続けた。
「あまりに自己中心的で身勝手だ」

被告はAさんから署名捺印した婚姻届を預かっていたが、提出しなかった(写真はイメージ)
うつむいたまま、それを聞く被告。検察官が「刑事施設に収容して、徹底した矯正教育をする必要がある」と実刑を求めた瞬間に顔を上げ、正面の検察官に視線を向けた。
◇
初公判は5月13日。刑務官に挟まれて入廷した被告は丸刈りにメガネ姿、身長170センチ前後で太り気味だった。黒と灰色のジャージーの上下を着ていて、時折、傍聴席に視線を向けた。
裁かれる身であることが影響しているかもしれないが、パイロットのイメージとはかけ離れていた。
冒頭陳述などによると、被告は高校卒業後に専門学校へ進学したものの中退し、職を転々。2019年に看護師の女性と2度目の結婚をしている。
被告は結婚前にパイロットと偽ってこの女性と交際していた。妊娠を機に真実を伝えても女性は被告を受け入れ、2年後には2人目の子どもが生まれた。
看護助手だった2023年8月、妻子がいるにもかかわらずマッチングアプリで知り合った被害者のAさん=当時(24)=に「結婚を前提に交際してほしい」と伝え、付き合い始めた。この時もパイロットを装った。2カ月後の10月に女性が妊娠すると、Aさんの両親に結婚のあいさつをした。
年明けの2024年1月、署名押印した婚姻届をAさんから預かったまま放置した。その一方で、新居を借りる費用の名目で30万円をだまし取った。さらにAさんの通帳を預かり、勝手に300万円を引き出す。これらの資金は生活費や2人の交際費に充てられた。

やがて300万円の使い込みが発覚し、被告は2024年6月にAさんと連絡を絶った。Aさんは検察官の調べにこう話したという。
「被告が憎くて憎くてしょうがない。いつ死のうかとまで考えた。絶対に許さない」
同じ頃、Aさんから相談を受けた警察が被告に接触した。これで妻に浮気がばれた上、被告のDVもあって11月に離婚した。
◇
犯行はこれで終わらなかった。その後の公判で驚くべき事実が語られた。
犯行発覚から1年後の2025年6月、3度目の結婚をして、妻の自宅で同居...
残り
1131/2261 文字
この記事は会員限定です。
無料会員に登録する
有料会員に登録する
ログインして続きを読む
有料会員に登録すると
会員向け記事が読み放題
記事にコメントが書ける
紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)
※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。
会員登録について詳しく見る
よくある質問はこちら
