宇宙好き増やす「キャスター」 榎本麗美さん…「少年団」、「飛行士」講座幅広く

「宇宙キャスター」として宇宙の魅力を伝え続ける女性がいる。宇宙イベントの司会、「宇宙少年団」の分団長、宇宙アクセサリーの開発、宇宙飛行士を目指す人向けの講座の運営……。「幅広い人たちに宇宙を目指してもらいたい」という思いが多彩な活動を支えている。

生物学 Feb 27, 2024

「宇宙キャスター」として宇宙の魅力を伝え続ける女性がいる。宇宙イベントの司会、「宇宙少年団」の分団長、宇宙アクセサリーの開発、宇宙飛行士を目指す人向けの講座の運営……。「幅広い人たちに宇宙を目指してもらいたい」という思いが多彩な活動を支えている。(笹本貴子)

宇宙少年団の活動の一環で、「月面食」をイメージして開発したラーメンを試食する子どもたちと榎本さん(右)(昨年10月29日、東京・日本橋で)
宇宙少年団の活動の一環で、「月面食」をイメージして開発したラーメンを試食する子どもたちと榎本さん(右)(昨年10月29日、東京・日本橋で)

 

 「将来、みんなで月に行ってラーメンを食べたいね」。昨年10月下旬、東京・日本橋に集まった約20人の小学生に、トレードマークの青いジャケット姿の榎本 麗美れみ さん(40)が笑顔で語りかけた。

 宇宙好きの子ども約3000人に、宇宙開発の第一線で活躍する人たちとふれあう機会などを提供する公益財団法人「日本宇宙少年団」の東京日本橋分団を2022年に発足させた。活動は月1回で、この日は自らがバイオ企業と「月面食」をイメージして開発したラーメンを皆で試食しながら、月面での食生活について話し合った。

榎本さんがバイオ企業と共同開発したインスタントラーメン。寒さに強い古代小麦を使った麺や、乾燥しにくいサボテンのほか、スープには微細藻類をだし代わりに使う
榎本さんがバイオ企業と共同開発したインスタントラーメン。寒さに強い古代小麦を使った麺や、乾燥しにくいサボテンのほか、スープには微細藻類をだし代わりに使う

 「月のクレーターに氷を入れて魚を育て、大好きなすしを食べたい」と、世田谷区の小学4年の鈴木譲司君(10)は提案。「何もない月で何が食べられるのか、考えるのは楽しい。将来は宇宙飛行士になりたい」と声を弾ませた。

 「少年団の子どもたちがいつか宇宙飛行士やロケット開発者として活躍し、記者会見に参加して泣くことが私の夢です」と榎本さんは言う。

 

 千葉県出身。幼少期に祖母が住む新潟県に遊びに行き、たくさんの虫や植物を見ては「なぜ広い宇宙の中で地球には生物がいるのか」と感じたことが、宇宙に興味を持ったきっかけ。周囲に宇宙好きはおらず、図鑑や本を一人で読みふけった。

 生命への興味から、大学ではバイオサイエンスを専攻し、がんについて研究をした。卒業後、知人の誘いでアナウンサー試験に挑戦し、05年に香川県の民放局に就職。しかし、「宇宙の仕事がしたい」という思いが次第に高まり、2年半後に退社した。

 転機は、フリーアナウンサーとして活動していた19年に訪れた。宇宙開発の担い手が民間企業にも広がる流れを捉え、宇宙新興企業のリーダーを紹介する番組を企画。日テレNEWS24で1年以上放送されるなど注目された。宇宙に関わる人々の情熱を自らの言葉で伝えることがライフワークとなり、「宇宙キャスター」の肩書を商標登録した。

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榎本さんがデザインした「ウチュリー」の商品。火星衛星探査計画「MMX」の探査機をモチーフにした
榎本さんがデザインした「ウチュリー」の商品。火星衛星探査計画「MMX」の探査機をモチーフにした

 同じ年、宇宙や星をテーマにしたアクセサリーのブランド「ウチュリー」を発表。20年からのコロナ禍では、宇宙飛行士の山崎直子さんらと子ども向けのオンライン動画の配信にも挑戦した。この活動が「宇宙教育」や少年団の発足につながった。

 宇宙飛行士を目指す人向けに、「めざせ!未来の宇宙飛行士」と題した講座も始めた。自らも「発信力」の講義を担当し、宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ )が22~23年に実施した宇宙飛行士選抜試験では、50人のセミファイナリストの中に教え子が2人残った。

 幼い頃の自分のように宇宙を一人だけで楽しむのでは、未来の宇宙業界を担う人材は育ちにくい。「仲間を増やせば人材育成につながり、業界全体の推進力になるはず」と信じてやまない。

「シリウス」目印冬の大三角 星座事典

 

 冬の南天で輝くオリオン座の周りには、ギリシャ神話の狩人オリオンにまつわる動物たちが星座となって輝いている。その一つが、おおいぬ座だ。

 犬の口元にあたる「シリウス」が目印。地球から約8.6光年と近く、南を向いて立つと、最も明るく見える恒星だ。視線を真上にずらすと、赤みを帯びたオリオン座の「ベテルギウス」が、斜め左上にはこいぬ座の「プロキオン」が輝いている。この三つの星を結ぶと「冬の大三角」ができる。

 おおいぬ座の神話には、名犬、番犬など様々なエピソードがある。有名なのが、オリオンが連れていた猟犬の1頭という説だ。シリウスを含む犬の顔を形作る三角形と、胴体、足、しっぽをつなぐ星々の並びを大きなイメージでとらえると、おおいぬ座が見えてくる。
(国立天文台・縣秀彦准教授)

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