図書館司書の資格を持つ東京新聞記者がお薦めの場所と本を紹介します JR恵比寿駅から、青山方面に7分ほど歩いたところにその食堂はある。店...
図書館司書の資格を持つ東京新聞記者がお薦めの場所と本を紹介します
JR恵比寿駅から、青山方面に7分ほど歩いたところにその食堂はある。店内に入ると、目の前に現れるのはキッチンとカウンター、そしてズラリと並んだ写真集たち。「先日数えてみたら、6666冊ありました」。運営者の一人で写真評論家の飯沢耕太郎さん(70)が話してくれた。
店内にはキッチンとカウンター、写真集の並ぶ本棚がある=須藤英治撮影
その名の通り、写真集を見ることができる食堂である。元々は飯沢さんが集めた大量の写真集の保管場所を探したことがきっかけ。料理人のおかどめぐみこさん(76)、イベントが得意な、ときたまさん(69)と話しているうちに、料理と写真集が両方楽しめる食堂を思い付いたという。
正統派から変わり種まで揃(そろ)っている。森山大道さん、荒木経惟(のぶよし)さんらの写真集もあれば、ひたすら冷蔵庫や欧州のアマチュアサッカーチームを撮っている本もある。貴重な写真集が見られる場所として、海外でも知られているそうで、「アジアやヨーロッパ、世界中からお客さまがいらっしゃいます。言葉に関係なく楽しめるのが、写真の良いところですよね」。ときたまさんが笑う。
もちろん、料理にもこだわりがある。「日本のおうちご飯」をテーマに料理を提供しているが、興味深いのが、今では見られなくなった料理を再現する復刻メシ。例えば、「まぐろの泣きご飯」は村井弦斎が書いた明治時代のベストセラー「食道楽」に出てくる「茶碗鮨(ちゃわんずし)」を再現したもの。試しに注文してみると、少し火を通したまぐろと濃厚なタレとご飯が食欲をそそる。「名前は『泣くほどうまい』と『泣くほどわさびで辛い』、どちらの意味もあるんです」(おかどさん)
恵比寿は隠れたアートの街としても有名。近くの山種美術館を訪れ、帰りにふらりと店に寄り、常連になる客も少なくないそうだ。「考えてみれば、写真って偶然性をすごく大事にする媒体なんです」と飯沢さん。「たまたま店に来て、たまたま座った席の横にある写真集を見る。そんな偶然の出合いを楽しんでほしいですね」(谷野哲郎)
村井弦斎「食道楽」中公文庫、990円
「まぐろの泣きごはんセット」2640円(夜)村井弦斎「食道楽」(中公文庫、990円)より
渋谷区東3の2の7
JR恵比寿駅から徒歩約7分
電話03(6805)1838
開店正午~午後10時
休日原則月曜と祝日
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