5年前、東京・京橋の複合ビル「東京スクエアガーデン」で、あるベンチが話題になった。酔っぱらった人やホームレスが横になれないよう、仕切りがある「排除ベンチ」。今はどうなっているのか。経緯を探り見えてきたのは、デザインした仕掛け人の苦悩と願いだった。(森合正範)
昼すぎ、中央通りに面したスクエアガーデン前のベンチはにぎわっていた。軽食をとる女性や買い物途中に休憩する外国人観光客、スマートフォンを眺めている男性もいた。

仕切り板が三つあるベンチ。多くの人がひと息ついていた=東京都中央区の東京スクエアガーデンで
その一角に、三つの仕切りのある木製ベンチがある。2021年4月、ツイッター(現X)で「排除ベンチ」として話題になった。中央通り沿いに8台並び、鍛冶橋通り沿いに2台、地下1階にも2台ある。
周囲に案内は見当たらないが、実はこの仕切り板は横に動かせる可動式。ただ、実際に動かそうとしてみると難しい。少し上に上げると動いたが、長年動かしていないことを示すように板の下が汚れていない。
このベンチの発案者は、公共空間の設計やプロデュースを手がける「グランドレベル」代表の田中元子さん(51)だ。2019年、約1カ月の仮設期間中に、肘掛けや仕切りがなく座面の深い赤いベンチを置いた。座る人を選ばず、誰にでも「ようこそ」と開かれたデザイン。好評を得て、恒常的に置くことになった。

ベンチを監修した「グランドレベル」の田中元子さん(右)と大西正紀さん=東京都墨田区で
ところが、ビル管理会社からこう言われたという。「このエリアにホームレスと思われる人が1人いるらしい。来るかもしれないから手すりを付けてほしい」
それでも田中さんは仕切りがなく、広くて平らな座面を提案した。だが、管理会社側はホームレスの長居やスケートボーダーがベンチを滑ることへの苦情を警戒した。管理やトラブルの不安がつきまとい、手すりのない案は通らなかった。
議論を重ね、田中さんらが考え出したのが、低い手すり状の板が動き、外すこともできるベンチだった。肘掛けのような完全な仕切りではなく、ペットボトルやスマートフォンを置きたくなる区切りの板。しかも横にスライドして三つの板を合わせると、...
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